〜 あなたのペースで、あなたらしく 〜
境界知能とは、IQが70〜84くらいの範囲にある状態をいいます。平均的なIQは100で、IQ 70未満は知的障害にあたります。境界知能は、その「あいだ」にある知能のグレーゾーンです。
人口の約14%、およそ7人に1人がこの範囲に入ります。決してめずらしいことではありません。
学校では「ちょっと勉強が苦手な子」、職場では「仕事が遅い人」と見られがちですが、障害者手帳の対象にならないことが多く、支援の谷間に落ちやすいのが大きな問題です。
境界知能は「障害」とは診断されないことがほとんどです。でも、「普通」にできることが求められる場面では、とても苦しい思いをしてきた方が多くいます。
境界知能は、怠けや努力不足ではありません。脳の情報処理のスピードが人とすこしちがうだけです。自分に合ったやり方を見つけることが大切です。
以下のリストを読んでみてください。「あてはまるな」と感じるものが多い方は、境界知能が背景にあるかもしれません。
境界知能の方は、うつ病・不安障害・適応障害になりやすいことがわかっています。
「みんなができることが自分にはできない」——そんな経験がつみ重なると、自己肯定感がどんどん下がっていきます。いじめ、からかい、職場での孤立を経験してきた方も少なくありません。
これは「二次障害」と呼ばれます。境界知能そのものの問題ではなく、まわりの環境や長年の苦しい経験がこころの病気を引き起こすのです。
次のようなことが続いているときは、こころが疲れているサインかもしれません。
境界知能の方は、「普通」を求められ続けた結果、慢性的なストレス状態にあることが多いです。人と同じことをするのに、脳がフル回転している——疲れやすいのは当然のことです。二次障害は治療できます。「がまんが足りない」のではありません。
つらいのはあなたのせいではありません。「最近つらいな」「前より元気がないな」と感じたら、むりをしないで相談してください。当院では、境界知能が背景にあるこころの不調の治療も行っています。
毎日の生活をすこし楽にするための6つのヒントです。全部いちどにやる必要はありません。できそうなものから、ひとつずつ試してみてください。
「わかりません」と言うのははずかしいことではありません。わかったふりをするほうが、あとで困ります。「もう一度教えてください」「ゆっくり言ってください」——これはかしこい方法です。
スマホは最強のサポートツールです。仕事の手順を動画で撮る、大事なことをメモに残す、写真で記録する。「覚えておく」より「残しておく」ほうがずっと安心です。
苦手なことばかりに注目しないでください。得意なことを伸ばすほうが、人生は楽になります。手作業が得意、やさしい、まじめ——あなたにも必ず「得意」があります。
人より疲れやすいのは、脳がフル回転しているからです。これは当然のことです。こまめに休憩をとりましょう。「がんばりすぎない」ことも大切なスキルです。
一人で抱え込まないでください。家族、支援者、主治医の先生——「困ったらこの人に連絡する」というリストを作っておくと安心です。スマホに連絡先を登録しておきましょう。
人と比べない。昨日の自分と比べる。まわりのペースに合わせようとしてムリをしていませんか?あなたにはあなたのペースがあります。それでいいのです。
「障害者手帳が取れない=支援を受けられない」ではありません。境界知能の方でも使える制度やサービスがあります。知らないと使えないので、ぜひ知っておいてください。
二次障害(うつ、不安、適応障害)の治療ができます。また、境界知能の評価(知能検査)も精神科で受けられます。「自分はどうなんだろう?」と思ったら、まず相談してみてください。
仕事につくための練習をする場所です。障害者手帳がなくても、医師の意見書があれば利用できる場合があります。自分に合った働き方を見つけるサポートを受けられます。
就職活動の相談や、職場定着のサポートを受けられます。「どんな仕事が自分に合うのか」「職場でうまくやっていくにはどうしたらいいか」など、一緒に考えてくれます。
金銭管理、料理、生活スキルの練習ができる場所です。一人暮らしの準備や、日常生活で困っていることを改善するためのサポートが受けられます。
障害者手帳がなくても利用できる相談窓口です。お金のこと、住まいのこと、仕事のこと——生活で困っていることを幅広く相談できます。お住まいの市区町村に窓口があります。
障害者手帳が取れなくても、使える制度はあります。「自分は手帳がもらえないから何も使えない」とあきらめないでください。まずは相談してみてください。当院でも情報提供や意見書の作成ができます。
境界知能のある方は、人と同じことをするのに倍以上のエネルギーを使っています。「努力が足りない」のではなく、すでにとても努力しています。「なぜできないの?」という言葉は、本人をいちばん傷つけます。
「普通の学校に行ってほしい」「普通に就職してほしい」——その気持ちはわかります。でも、本人なりのペースがあります。「普通」を求めすぎると、本人が追いつめられてしまいます。本人に合った目標を一緒に考えてあげてください。
「ちゃんとして」「しっかりして」のようなあいまいな言い方は伝わりにくいです。「靴を棚に入れてね」「8時に出かけるよ」のように、具体的に短く伝えると、本人もわかりやすくなります。一度にたくさんのことを言わないのもコツです。
小さなことでも「できた」を認めてあげてください。「当たり前」と思わないでください。本人は「当たり前のこと」をするのにも大きな努力をしています。認められる経験が、自信につながります。
境界知能のある方は、悪質な契約や詐欺の被害にあいやすい面があります。高額な契約やローンの話が出たときは、必ず一緒に確認してあげてください。よくわからないまま契約してしまうケースがあります。
「どうしたい?」「何が困ってる?」——本人の気持ちを聞いてあげてください。本人にもやりたいこと、考え、意見があります。「この人にはわからない」と決めつけないでください。
ご家族が元気でいることが、本人の安心にもつながります。すべてを一人で背負わないでください。相談支援事業所や家族会など、ご家族を支える仕組みもあります。「自分も疲れている」と感じたら、遠慮なく助けを求めてください。
当院では、境界知能が背景にある方の二次障害(うつ・不安・適応障害)の治療、知能検査による評価、生活のお困りごとの相談を行っています。診断書や意見書の作成もできます。
ご本人もご家族も、おひとりで悩まず、お気軽にご相談ください。