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認知症の介護ガイド

〜 介護するあなた自身も、大切な存在です 〜

はじめに

認知症のご家族を介護することは、心身ともに大変な日々の連続です。

このページは、介護の中で「困った」「つらい」と感じたときに、少しでもヒントになればという思いで作りました。

完璧な介護をする必要はありません。あなたが元気でいることが、ご本人にとっても一番の支えです。

日常のケアのコツ

毎日の生活の中で「どうしたらいいんだろう」と迷う場面は少なくありません。完璧にやろうとしなくて大丈夫です。ここでは場面ごとのちょっとしたコツをご紹介します。

🍚 食事

  • 食べない・食べすぎ・異食があるときは、無理強いせず様子を見守りましょう。食べすぎが続くときは、小さめのお皿に盛り付ける工夫も
  • 食べやすい工夫として、一口大に切る、スプーンを使うなどの方法があります。食べこぼしても気にしすぎず、楽しい食事の雰囲気を大切に
  • 「食べたことを忘れる」ときは、「さっき食べたでしょ」と責めるのではなく、軽食やお茶を用意してあげるのもひとつの方法です
  • 脱水に注意が必要です。「お茶を飲みましょうか」とこまめに声をかけてみてください。特に夏場は意識的な水分補給を

🛁 入浴

  • お風呂を嫌がるときは、「足だけ温めましょうか」と段階的に誘ってみると、うまくいくこともあります
  • 安全対策として、手すりの設置、滑り止めマット、お湯の温度設定(38〜40度)を確認しておくと安心です
  • 羞恥心への配慮も大切です。同性の方が介助する、タオルで体を隠すなどの工夫を
  • 無理強いは逆効果です。どうしても嫌がるときは、蒸しタオルで体を拭く「清拭(せいしき)」で代用しても大丈夫です

🚻 トイレ

  • トイレの場所がわからなくなったら、ドアに大きく「トイレ」と表示したり、夜間は足元の誘導灯をつけたりする工夫が役立ちます
  • 失禁への対応は、叱らず、さりげなく着替えを促しましょう。ご本人も気づいていることがあり、叱ると自尊心が傷つきます
  • 定時誘導として、食事の前後やお出かけ前など、決まったタイミングでトイレに声をかけてみるのも効果的です
  • おむつの使用は、必要に応じて適切に取り入れましょう。「おむつ=かわいそう」ではなく、快適に過ごすための工夫です

👔 着替え

  • 服を選べないときは、2〜3着の中から選んでもらうと、ご本人の自主性を保ちながらスムーズに進むことがあります
  • 季節に合わない服を着るときは、「今日は暖かいので、こちらはどうですか?」とさりげなく声をかけてみてください
  • 着る順番がわからないときは、着る順番に服を並べて渡す、または一枚ずつ手渡すとうまくいくことがあります

🌙 睡眠

  • 昼夜逆転が起きたら、日中の活動量を増やす、朝に日光を浴びるなど、生活リズムの調整を試みてください
  • 夜間の不穏(夜中に起きて落ち着かない状態)があるときは、室内の明かりや室温など環境を整えてみましょう。続くときは主治医にご相談を
  • 安全対策として、ベッド周りの転倒防止(柵の設置など)、必要に応じてセンサーマットの活用も検討してみてください

困った行動への対応

認知症の方の「困った行動」には、必ず理由があります。ご本人なりの不安やとまどいが背景にあることを知っておくと、対応のヒントが見つかるかもしれません。

❌ 「盗んでいません!」と否定すると、かえって疑いが強くなることがあります

✅ 「困りましたね。一緒に探しましょう」と寄り添ってみてください

✅ あらかじめ「見つかりやすい場所」を決めておくと安心です

なぜ起こる? 記憶障害により、自分がしまった場所を忘れてしまいます。「なくなった=誰かが盗った」と解釈してしまうのは、脳の病気による症状です。身近な人ほど疑われやすい傾向があります。

❌ 「さっき言ったでしょ」は禁句です。ご本人にとっては毎回が「初めて」なのです

✅ 初めて聞かれたように、穏やかに答えてみてください

✅ メモや張り紙を活用するのも手です(「今日は○曜日」「ごはんは○時」など)

なぜ起こる? 短期記憶の障害により、聞いたこと・話したことをすぐに忘れてしまいます。本人には「何度も聞いている」という自覚がないため、叱られると混乱や不安が増してしまいます。

事前の対策が大切です:GPS端末を持ち物に入れる、名前・連絡先を書いたものを身につける、近隣の方への声かけ

✅ 出かけようとしたら、無理に止めるよりも一緒に歩く、または「お茶を飲みませんか?」と気をそらす方法もあります

✅ お住まいの地域の見守りネットワークに登録しておくと安心です

✅ 鍵の工夫として、目立たない場所に補助錠を設置する方法もあります

なぜ起こる? 「家に帰りたい」「仕事に行かなきゃ」など、ご本人なりの目的があることがほとんどです。見当識障害により、今いる場所や時間がわからなくなることが原因です。

ご本人も苦しんでいます。脳の病気による感情コントロールの障害であり、ご本人の「本心」ではありません。

✅ 直前の「きっかけ」を振り返ってみてください(環境の変化、体調不良、不安、痛みなど)

危険を感じたら、まず距離をとってください。あなたの安全が最優先です

✅ 主治医に相談しましょう。お薬の調整で改善することもあります

なぜ起こる? 脳の前頭葉の機能低下により、感情のコントロールが難しくなります。不安・恐怖・痛みなどがうまく言葉にできず、暴言や暴力として表れることがあります。

❌ 無理強いは逆効果になることが多いです

✅ タイミングを変えてみる、声かけの仕方を工夫してみる

✅ 「お風呂に入りましょう」ではなく、「足だけ温めましょうか」と段階的に誘ってみる

✅ 同性の介助者に変えてみると、スムーズにいくこともあります

なぜ起こる? 入浴や着替えの「意味」がわからなくなっている、羞恥心が強い、寒さや不快感への不安などが考えられます。ご本人にとっては「嫌なことをされそう」という恐怖心があるのかもしれません。

施設にいても、自宅にいても、「ここは家じゃない」とおっしゃることがあります。

❌ 「ここがお家ですよ」と正論を言っても伝わりにくいことが多いです

✅ 「帰りたいですよね」と気持ちをまず受け止めてから、お茶や好きなことで話題を変えてみてください

なぜ起こる? 「安心できる場所に帰りたい」という気持ちの表れです。「家」は物理的な場所というよりも、安心感や懐かしさの象徴であることが多いです。

介護者のセルフケア

がんばりすぎないでください。
あなた自身の人生も大切です 🌸

介護する方が心身ともに健康でいることが、ご本人にとっても一番の安心につながります。

介護者が陥りやすい状態

以下のような気持ちは、介護をしている方なら誰もが経験するものです。あなただけではありません。

  • 疲労の蓄積 — 身体的にも精神的にも、気づかないうちに疲れがたまっていきます
  • 孤立感 — 「誰もわかってくれない」「自分だけが大変」と感じることがあるかもしれません
  • 罪悪感 — 「もっとやれるはず」「施設に預けるのは悪いこと?」と自分を責めてしまうことも
  • 怒りや悲しみ — ネガティブな感情を感じるのは当然のことです。自分を責めなくて大丈夫です

セルフケアのヒント

  • 🫁 自分の時間を「意識的に」確保してみてください。30分でもいいのです。散歩、お茶、深呼吸——なんでも構いません
  • 📞 一人で抱えないでください。家族会や相談窓口に電話してみるだけでも、気持ちが楽になることがあります
  • 🏥 介護サービスを「遠慮なく」使ってください。デイサービスやショートステイは、介護者のためにもあるサービスです
  • 😢 泣きたいときは泣いていい。怒りを感じるのも普通のこと。感情を無理に抑え込まなくて大丈夫です
  • 📝 介護日記をつけると、気持ちの整理になることがあります。つらかったこと、嬉しかったこと、なんでも書いてみてください
  • 💤 睡眠を確保することはとても大切です。夜間の介護がつらいときは、主治医に相談してみてください

完璧な介護者である必要はありません。

施設を利用することは「見捨てる」ことではありません。
ご本人が安全に過ごせる環境を選ぶことも、大切な愛情の形です。

あなたが倒れてしまったら、
ご本人を支えることもできなくなります。

介護を「手伝ってもらう」のではなく、
「チームで行う」と考えてみてください。

がんばりすぎないでください。
あなた自身の人生も大切です 🌸

使える制度・サービス

介護保険制度を使うと、さまざまなサービスを利用できます。まずはお住まいの市区町村の窓口で要介護認定の申請を行いましょう。

🏥 主な介護保険サービス
サービス名 内容
デイサービス 日中の預かり・リハビリ・入浴・食事など。介護者の休息にもなります
ショートステイ 短期間(数日〜2週間程度)の宿泊。介護者のリフレッシュに
ヘルパー(訪問介護) ご自宅にヘルパーが訪問。身体介護や生活援助を行います
グループホーム 認知症の方が少人数で共同生活する施設。家庭的な環境です
特別養護老人ホーム 要介護3以上の方が入所できる施設。24時間の介護を受けられます
💡 要介護認定の申請方法

お住まいの市区町村の介護保険の窓口で申請できます。申請後、認定調査員の訪問調査と主治医の意見書をもとに要介護度が決定されます。わからないことがあれば、地域包括支援センターに相談してみてください。

相談窓口

認知症とともに

🌸 感情は最後まで残ります

認知症になっても、感情は最後まで残ります。笑顔、音楽、なじみの場所——心地よい体験は、きちんと伝わっています。

💡 「わかり方が変わった」のです

「何もわからなくなった」のではなく、「わかり方が変わった」のです。言葉では伝わりにくくても、表情やしぐさ、声のトーンでたくさんのことを感じ取っています。

ご本人の「できること」に目を向けてみましょう

一緒に散歩をする、昔の写真を見る、好きな音楽を聴く、花に水をやる——一緒にできることは、まだたくさんあります。

「できなくなったこと」ではなく「まだできること」に目を向けることで、ご本人の自信にもつながり、介護する方の気持ちも少し楽になるかもしれません。

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