〜 あなたらしく生きるために 〜
軽度知的障害は、「頭が悪い」ということではありません。情報の受けとり方やまとめ方が、多くの人とすこしちがうだけです。
IQでは50〜69くらいにあたり、全体のおよそ2%の方がこれにあてはまります。学校の勉強は苦手でも、生活や仕事ではできることがたくさんあります。
子どものころには気づかれず、大人になってから「そうだったんだ」とわかる方もたくさんいます。「今まで生きづらかった理由がわかった」と感じる方も多いです。
目で見たこと、耳で聞いたことを頭の中でまとめるのに、すこし時間がかかることがあります。ゆっくり・ていねいに伝えてもらえると、しっかり理解できます。
知的障害があっても、自分に合ったサポートがあれば、仕事をしたり、生活を楽しんだり、やりたいことに取り組めます。大切なのは、あなたに合ったやり方を見つけることです。
だれにでも得意なことと苦手なことがあります。軽度知的障害のある方に多い「得意」と「苦手」をまとめました。もちろん人によってちがうので、「自分はどうかな?」と考えながら読んでみてください。
軽度知的障害のある方は、うつ病や不安の症状が出やすいことがわかっています。これを「二次障害」といいます。
その理由は、長い間「みんなと同じようにできない」という経験がつみ重なってきたからです。いじめを受けたり、仲間はずれにされたり、自分に自信が持てなくなったりすることで、こころが疲れてしまいます。
次のようなことが続いているときは、こころが疲れているサインかもしれません。
研究では、軽度知的障害のある方は一般の方と比べてうつ病になるリスクが約3〜4倍高いと報告されています。しかし、二次障害は治療できます。「性格のせい」「がまんが足りない」のではありません。こころの病気として、きちんと治すことができます。
「最近つらいな」「前より元気がないな」と感じたら、むりをしないで相談してください。当院では、知的障害のある方のこころのケアも行っています。ひとりで抱え込まないでくださいね。
毎日の生活をすこし楽にするための5つのヒントです。全部いちどにやる必要はありません。できそうなものから、ひとつずつ試してみてください。
大事なことはスマホのメモや写真に残しましょう。買い物のリスト、やることリスト、約束の日時など。「覚えておく」より「書いておく」ほうが安心です。写真で残すと、あとから見て思い出せます。
朝の準備、仕事のやり方などをリストにして、毎日おなじ順番でやると覚えやすくなります。紙に書いて目に見えるところに貼っておくのもいい方法です。
「わかりません」「もう一度教えてください」と言うのははずかしいことではありません。わからないまま進めるほうが、あとで困ります。聞くことは、かしこい方法です。
1週間に使うお金を決めておくと安心です。キャッシュレスで買い物するときは、あとから使った金額を確認するくせをつけましょう。大きなお金を使うときは、信頼できる人に相談してからにしましょう。
「困ったらこの人に連絡する」というリストを作っておきましょう。家族、支援してくれる人、主治医の先生など。スマホに電話番号を登録しておくと、すぐに連絡できます。
知的障害のある方が使える制度やサービスがあります。知らないと使えないので、ぜひ知っておいてください。くわしいことは、市区町村の窓口や当院でも相談できます。
福祉サービスを受けるための手帳です。軽度の知的障害でも取れることがあります。手帳があると、電車やバスの割引、税金のサポートなど、いろいろな支援が受けられます。お住まいの市区町村の窓口で相談してみてください。
就労移行支援(仕事につくための練習をする場所)、就労継続支援A型・B型(サポートを受けながら働く場所)、障害者雇用(企業が障害のある人のために用意するお仕事)など、いろいろな働き方があります。自分に合った働き方を一緒にさがしましょう。
軽度の知的障害でも、日常生活にむずかしさがある場合は障害年金をもらえることがあります。申請には診断書が必要です。くわしくは当院やお近くの年金事務所にご相談ください。
福祉サービスの使い方を一緒に考えてくれる場所です。「どんなサポートを使えるの?」「どうやって申し込むの?」など、なんでも相談できます。サービスの利用計画もいっしょに作ってくれます。
支援を受けながら、自分の力で生活する場所です。ひとり暮らしは不安だけど、自立した生活をしたいという方にぴったりです。スタッフがそばにいるので、困ったときにすぐ相談できます。
「ちゃんとして」「しっかりして」のようなあいまいな言い方は伝わりにくいです。「靴を棚に入れてね」「8時に出かけるよ」のように、具体的に短く伝えると、本人もわかりやすくなります。
小さなことでも「できた!」という体験は、本人の自信につながります。「過保護」にならず、でも「放任」もしないことが大切です。本人ができることまで代わりにやってしまうと、成長のチャンスがなくなってしまいます。見守りながら、できたときは一緒によろこんでください。
「この子にはわからない」「この子には決められない」と決めつけないでください。本人にもやりたいこと、好きなこと、意見があります。わかりやすく選択肢を見せて、本人が選べるようにしてあげてください。自分で決めたことは、やる気にもつながります。
軽度知的障害のある方は、人を信じやすいやさしさがある一方で、悪い人にだまされやすい面もあります。よくわからない契約にサインさせられる、お金を貸してと言われて断れないなど、トラブルに注意してください。必要に応じて成年後見制度の利用も検討しましょう。
ご家族が元気でいることが、本人の安心にもつながります。すべてを一人で背負わないでください。家族会への参加、レスパイトサービス(一時的な休息)の利用、相談支援事業所への相談など、ご家族をサポートする仕組みもあります。
当院では、軽度知的障害のある方の二次障害(うつ・不安)の治療、お薬の調整、生活のお困りごとの相談を行っています。診断書や意見書の作成もできます。
ご本人もご家族も、おひとりで悩まず、お気軽にご相談ください。