〜 生理前のつらさには、ちゃんと理由があります 〜
生理の前になると、自分でも驚くほどイライラしたり、涙が止まらなくなったり、何もかもがつらく感じたり——。 そして生理が始まると、まるで霧が晴れたように楽になる。 「どうして毎回こうなってしまうんだろう」「これって性格の問題?」と、ご自身を責めてこられた方も多いかもしれません。
それは、あなたの弱さでも性格でもありません。ホルモンの波に、こころと体がとても敏感に反応している状態です。 仕組みがわかると、対処の道すじが見えてきます。
意外に思われるかもしれませんが、PMDDの方のホルモン量は、ほとんどの場合正常範囲です。 問題はホルモンの「量」ではなく、排卵後に分泌される女性ホルモン(プロゲステロン)の代謝物 「アロプレグナノロン」に対する、脳の感受性(反応のしやすさ)にあると考えられています。
この物質は本来、こころを落ち着ける働き(GABAという神経の作用)に関わりますが、 PMDDの方ではこの調整がうまくいかず、逆に不安・イライラ・気分の不安定さとして現れてしまうのです。 セロトニン系の働きも関係していることがわかっています。
PMDDの最大の特徴は、症状が月経周期と連動すること。 排卵のあと(黄体期=生理前の約1〜2週間)に強まり、生理が始まって数日以内にすっと軽くなり、 生理後〜排卵までの時期はほとんど症状がない——この「波」がはっきりしているのが見分けるポイントです。
紫色の「生理前(黄体期後半)」に症状がピークになり、月経が始まると数日で楽になります。 この規則的なパターンこそが、PMDDを理解する手がかりです。
とくに次のような気分の症状が中心になります。
生理前に不調が出ること自体は、とてもよくあること。月経のある方の多くがなんらかの変化を感じます。 PMSとPMDDは「別物」というより、つらさの強さと、こころへの影響の大きさがちがう、と考えるとわかりやすいです。
生理前の心身の不調。むくみ・眠気・軽いイライラなど。 つらくても、なんとか日常生活は送れることが多い状態です。月経のある方の多くが経験します。
PMSの中でも、とくに気分の症状が重いタイプ。 仕事・家事・人間関係に支障が出るほどで、3〜8%の方にみられます。 DSM-5では正式な診断名として位置づけられています。
PMDDの診断は、1回の問診だけでは確定できません。 症状が本当に月経周期と連動しているかを確かめるため、 毎日の症状を2周期(約2か月)以上つけていただくことが国際的な基準で推奨されています。 記録があると、「生理前だけ強くなる」というパターンがはっきり見え、 うつ病や不安症の「生理前の悪化」との区別もつきやすくなります。 受診の前から、手帳やアプリで簡単にメモしておくだけでも、診察がぐっとスムーズになります。
症状を毎日メモするだけで、「あ、来週はつらくなる時期だ」と前もって心の準備ができます。 見通しが立つだけで、症状に振り回される感じがやわらぎます。診断にも役立つ、いちばん大切な一歩です。
ウォーキングや軽い運動は、つらい時期の気分をやわらげることが研究で示されています。 がんばりすぎず、つらい時期は「予定を詰めない」「自分を休ませる」と先に決めておくのもおすすめです。
カフェインやアルコールはイライラや不眠を、塩分のとりすぎはむくみを強めることがあります。 生理前の時期だけでも少し意識すると、体がぐっと楽になる方もいます。
睡眠の乱れは症状を強めます。生理前の時期は、いつもより早めに休む・呼吸法やストレッチで体をゆるめるなど、 自分をいたわる時間を意識してみてください。
カルシウム(1日約1000〜1200mg)やビタミンB6が、PMSの症状をやわらげる可能性が報告されています。 体に大きな負担の少ない方法ですが、量や続け方は人によって向き不向きがあります。 試してみたいときは、主治医や薬剤師に相談してから始めると安心です。
セルフケアだけではつらいときも、安心してください。PMDDには効果の確かめられた治療があります。 自分に合うものを、主治医と一緒に選んでいけます。
PMDDの第一選択の治療です。うつ病のときと違い、PMDDでは数日で効果が出るのが特徴で、 毎日飲む方法のほか、生理前のつらい時期だけ飲む(黄体期だけの服用)という使い方もできます。 「ずっと薬を飲み続けるのは…」とためらう方にも、選びやすい治療です。
排卵を抑えることで、ホルモンの波そのものをなだらかにする方法です。 とくにドロスピレノンという成分を含むタイプがPMDDに用いられます。 体の症状にも、避妊や月経痛にも役立つことがあります。婦人科と連携して進めることもあります。
つらい時期の考え方やすごし方を整える心理的アプローチも有効です。 薬を使いたくない方、薬と組み合わせたい方の選択肢になります。 当院では、記録・セルフケア・必要に応じた薬物療法を組み合わせて、無理のない形を一緒に考えます。
PMDDでは、生理前の時期に「消えてしまいたい」という気持ちが強まることがあります。 それは症状の一部であり、時期が過ぎれば必ずやわらぎます。 ひとりで抱えず、その気持ちが強いときは、早めに当院や相談窓口に連絡してください。 どうしてもつらいときは、「いのちの電話」や、お住まいの地域の相談窓口も24時間あなたを支えています。
PMDDは「気のせい」でも「わがまま」でもなく、適切なサポートで楽になる状態です。 当院では、症状の記録から一緒に整理し、お一人おひとりに合った対処と治療を考えていきます。 生理前のことは話しにくいと感じる方もいますが、どうぞ安心してお話しください。
詳しくは主治医にご相談ください
気になることがあれば、主治医にも相談してみてくださいね