〜 ひとりで、急にやめない。体を守りながら手放す 〜
お酒を手放そうと思うこと——それ自体が、とても大きな一歩です。けれど、根性や我慢だけで挑むと、つらいだけでなく体に危険が及ぶこともあります。
大切なのは、「正しく・安全に・支えられながら」進めること。このページでは、その手順を4つのステップでご紹介します。ひとりで抱え込まず、医療や仲間の力を借りながら進めていきましょう。
お酒を飲み続けると、脳は「アルコールがある状態」に慣れて、バランスを取ろうとブレーキとアクセルを調整します。そこへ急にアルコールが抜けると、ブレーキが効かず神経が暴走し、震え・発作・せん妄が起こります。だからこそ、体を慣らしながら、安全に減らしていくことが必要なのです。
※ お酒と脳のしくみは 「アルコール依存症の理解」 でくわしく解説しています。
まず、ひとりにならないことから。医療機関(精神科・心療内科・アルコール専門外来)に相談し、今の体の状態を確認します。そのうえで、ゴールを一緒に決めます。
依存が進んでいる場合、お酒を抜く時期(解毒)は医療管理のもとで行うのが安全です。必要に応じて、離脱症状をやわらげるお薬(抗不安薬など)やビタミン補給が使われ、入院が選ばれることもあります。
体が落ち着いたら、飲みたくなる状況(引き金)を減らす環境づくりです。意志で耐えるより、最初から「飲まなくていい毎日」を設計するほうが続きます。
断酒は「やめた瞬間」より「続けること」が本番です。渇望への対処を身につけ、仲間や薬の力も借りながら保っていきます(次の項目でくわしく)。
ゴールは一つではありません。安全で確実なのは断酒ですが、ハードルが高いと感じる人には、まず減酒から始める方法もあります。どちらが自分に合うか、主治医と相談して決めましょう。
お酒を完全に手放す。依存が進んでいる人・体に影響が出ている人には、もっとも安全で確実。再飲酒の引き金を断ちやすい。
まず量を減らす目標から。「いきなり断酒は無理」という人の入口に。飲酒量を減らすお薬を使う方法もある。ただし依存が重い人には不向きなことも。
飲みたい気持ち(渇望)は、波のように来て、必ず引いていきます。多くの場合、ピークは長くは続きません。「波を、飲まずにやり過ごす」コツを持っておきましょう。
渇望は、次の4つの状態のときに強くなりがちです。頭文字をとってHALT(ハルト=止まれ)。「飲みたい」と感じたら、まずこの4つをチェックしてみましょう。
お腹がすいていない? まず食べる。
怒り・イライラを抱えていない?
ひとりで寂しくない? 誰かに連絡を。
疲れていない? 休む・眠る。
飲酒を抑える断酒補助薬、飲むと気分が悪くなる抗酒薬、飲酒量を減らす低減薬など、断酒を支えるお薬があります。自己判断ではなく、医師と相談して使います。(詳しくは依存症の理解ページへ)
同じ経験を持つ仲間とつながる断酒会・AA(アルコホーリクス・アノニマス)は、回復を続けるうえで大きな力になります。「自分だけじゃない」と思えることが支えになります。
飲まなかった日を記録すると、続ける励みになります。アプリの「お酒のモニタリング」で、飲酒量や調子の変化を振り返ってみましょう。
責めるより、回復を一緒に喜ぶ存在が力になります。ご家族もまた疲れていることが多いので、家族向けの相談先につながることも大切です。
断酒の途中で、また飲んでしまうこと(スリップ)はめずらしくありません。大切なのは、そこで自分を責めて投げ出さないことです。
「ゼロに戻った」のではなく、「ここまで来た中の、一回のつまずき」ですなぜ飲んでしまったのか(引き金・HALT)を振り返り、すぐに立て直す。回復は、まっすぐな一本道ではなく、行きつ戻りつしながら進むものです。スリップしたときこそ、ひとりで抱えず、医療や仲間に連絡してください。
精神科・心療内科・アルコール専門医療機関のほか、各地の精神保健福祉センター・保健所でも相談できます。当院でも、安全な断酒・減酒のご相談をお受けします。ひとりで抱えず、まずはつながってください。