〜 自分を守りながら働くために 〜
職場のストレスの多くは、実は「仕事の内容」そのものより「人間関係」から来ています。NIOSH(米国国立労働安全衛生研究所)の職業性ストレスモデルでは、上司・同僚・部下との人間関係が最大のストレス因子の一つとされています。仕事の量や難しさよりも、「誰と、どう働くか」が心の健康を大きく左右します。
ストレスにさらされた体は、段階的に変化していきます。自分が今どの段階にいるか、振り返ってみましょう。
体がストレスに気づき、アラームが鳴る段階。不眠、食欲低下、頭痛、イライラなどの初期サインが現れます。
体がストレスに適応しようと頑張る段階。「まだ大丈夫」と感じますが、エネルギーを消耗し続けています。
適応のエネルギーが尽きた段階。心身の不調が一気に噴き出します。うつ状態、体調不良、出勤困難などが起こりやすくなります。ここに至る前に手を打つことが大切です。
抵抗期にいる人は、自分では「なんとかなっている」と思いがちです。でも実は、無理をして耐えている状態。周囲の人に「最近大丈夫?」と聞かれたら、立ち止まって自分の状態を確認してみてください。自分で「大丈夫」と言い聞かせている時こそ、要注意のサインです。
「頼まれたら断れない」「みんなに好かれたい」――その気持ちは自然なものですが、NOと言えないことで自分が壊れてしまっては本末転倒です。「嫌われたくない」という恐れが、あなたの境界線を溶かしていませんか?
良い人をやめることは、冷たい人になることではありません。自分を大切にしながら、適切な距離感を保つということです。
以下のような場面で、あなたの境界線は侵されていませんか?
断ることに罪悪感を感じる人は多いですが、「クッション言葉+理由+代替案」の3ステップで、相手を傷つけずに自分を守ることができます。
例1)「お声がけいただきありがとうございます(クッション)。ただ今週は締め切りが重なっていまして(理由)、来週であればお手伝いできますがいかがでしょうか(代替案)。」
例2)「ご相談ありがとうございます(クッション)。残念ながら今の業務量では難しい状況です(理由)。〇〇さんに相談されてみてはいかがでしょうか(代替案)。」
上司との関係で悩む人は非常に多いです。以下のポイントを意識してみましょう。
報告:結論から先に伝える。「〇〇の件、完了しました」
連絡:事実と意見を分ける。「現状は〇〇です。私としては△△が良いと考えます」
相談:自分の案を持って相談する。「〇〇の件で悩んでいます。A案とB案を考えたのですが、ご意見いただけますか」
理不尽な指示への対処:感情的に反論せず、「確認させてください」と一呼吸置く。書面(メール)でやりとりを残すことも大切です。
職場の優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、就業環境が害されること。身体的な攻撃だけでなく、精神的な攻撃、過大な要求、過小な要求、人間関係からの切り離し、個の侵害の6類型があります。
💡 例:人前で怒鳴る、無視する、達成不可能なノルマ、仕事を与えない職場における性的な言動に対する労働者の対応により、その労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されること。「対価型」と「環境型」があります。
💡 例:容姿に関する発言、不必要な身体接触、性的な噂の流布言葉や態度によって精神的に追い詰める行為。暴力は伴わないため周囲から見えにくく、被害者自身も「自分が悪い」と思い込みやすいのが特徴です。
💡 例:ため息・舌打ち、無視、陰で悪口、人格否定、功績の横取りハラスメントの被害者は、長期間にわたる精神的な圧力により、自分が悪いのだと思い込んでしまうことがあります。「これくらいどこの職場でもある」「自分が弱いだけ」――こうした考えが浮かぶこと自体が、すでに心が追い詰められているサインかもしれません。
信頼できる第三者に「こういうことがあった」と事実を伝えてみてください。客観的な視点が、あなたの感覚を取り戻す助けになります。
いざという時のために、記録を残しておくことが大切です。
バーンアウトは、仕事への過度な献身が続いた結果、心身のエネルギーが枯渇する状態です。心理学者マスラック(Maslach)によると、バーンアウトには3つの主要な症状があります。特に対人援助職(医療、教育、介護など)に多いとされてきましたが、現在ではあらゆる職種で起こりうることがわかっています。
以下に当てはまるものが複数あれば、バーンアウトのサインかもしれません。
バーンアウトからの回復には、まず「休んでいい」と自分に許可を出すことが必要です。「みんな頑張っているのに」「自分だけ休むなんて」という考えが浮かぶかもしれませんが、それこそがバーンアウトの罠です。壊れた状態で働き続けることは、自分にとっても職場にとってもマイナスです。
職場ストレスへの対処は、「なんとなく辛い」を「何が辛いのか」に分解することから始まります。ワークシートでは、ストレス源の見える化、断り方の練習、1週間のエネルギー記録に取り組めます。