〜 わがままではありません。しくみを知るとケアが楽になります 〜
「さっき行ったばかりなのに、またトイレ」「間に合わずに失敗してしまった」——認知症の方の介護で、トイレにまつわる困りごとはとても多いものです。
これはご本人のわがままでも、介護する方への嫌がらせでもありません。体の変化と認知症の症状が重なって起きているもので、原因に合わせた工夫で楽にできることがたくさんあります。
実際には尿がたまっていないのに「トイレに行きたい」と繰り返すことがあります。これは、不安や手持ち無沙汰なとき、「トイレ」という言葉で安心を求めているのかもしれません。
そんなときは、トイレにお連れした後に、お茶の時間や簡単な役割(洗濯物たたみなど)に誘ってみると、気持ちが落ち着いて訴えが減ることがあります。
認知症の方の頻尿には、治療で良くなる体の原因が隠れていることがよくあります。「認知症だから仕方ない」と決めつける前に、一度チェックしてもらいましょう。
認知症の方は「痛い」「しみる」とうまく伝えられないことがあります。急に頻尿や失敗が増えた、ぼんやりする・興奮するなど様子がいつもと違うときは、膀胱炎が隠れているかもしれません。尿検査ですぐ調べられます。
利尿薬(むくみや血圧のお薬)や一部のお薬は、尿の量や回数を増やすことがあります。飲んでいるお薬の一覧を持って、かかりつけ医に相談してみましょう。飲む時間の調整だけで夜のトイレが減ることもあります。
便秘でたまった便が膀胱を圧迫して頻尿になることがあります。男性では前立腺肥大、また糖尿病でも尿が増えます。いずれも治療できる原因です。泌尿器科や内科で相談しましょう。
頻尿のお薬のうち「抗コリン薬」と呼ばれるタイプは、認知機能に影響することがあるため、認知症の方には慎重に使います。近年は認知機能への影響が少ないタイプのお薬(β3作動薬など)もありますので、自己判断で市販薬を使わず、必ず医師と相談して選んでください。
数日間、トイレの時間をメモしてみると、その方のリズムが見えてきます。失敗しやすい時間の少し前に「お茶の前にトイレに寄っておきましょうか」とさりげなく誘うと、失敗がぐっと減ります(時間を決めた誘導は、介護の現場でも効果が確かめられている方法です)。
ドアに大きな文字や絵で「トイレ」と表示する、ドアを開けておく、夜は廊下と便座まわりに明かりをつける(人感センサーライトが便利です)。トイレまでの通り道に物を置かないことも転倒予防になります。
ボタンやベルトよりもゴムウエストのズボンが扱いやすく、「間に合わない」を減らせます。尿とりパッドやリハビリパンツを使うときは、ご本人の気持ちに配慮して、「念のためのお守り」のような伝え方でさりげなく勧めましょう。
トイレが心配だからと水分を減らしすぎると、脱水・便秘・せん妄(急なもうろう状態)のリスクが上がってしまいます。日中はしっかり飲んでいただき、夕方以降は量を控えめに。カフェインの多いお茶やコーヒーは午後は少なめが安心です。
寝る前のトイレを習慣に。寝室からトイレまでが遠い場合は、ポータブルトイレを寝室に置くのも良い方法です。夜中の付き添いがつらいときは、ケアマネジャーに相談して福祉用具や夜間対応のサービスを検討しましょう。
失敗はご本人もショックを受けています。責めたり大きな声を出したりせず、「着替えましょうね」とさりげなく手伝うのがいちばんです。ご本人の自尊心が守られると、混乱や興奮も起きにくくなります。
何度も呼ばれる、夜眠れない、失敗の片付けが続く——トイレにまつわる介護は、身体的にも精神的にも大きな負担です。「疲れた」「つらい」と感じるのは当然のことで、あなたの優しさが足りないからではありません。
排泄の介護は、プロの手を借りてよい領域です。訪問介護・デイサービス・福祉用具(ポータブルトイレなど)のレンタルは介護保険で利用できます。担当のケアマネジャーがいない場合は、お住まいの地域包括支援センターが最初の相談窓口になります。
→ 介護全般のコツは「認知症の介護ガイド」もご覧ください
以下のようなときは、早めに受診・相談してください:
トイレの困りごとは、体の治療とケアの工夫で必ず楽にできる部分があります。おひとりで抱え込まないでください。