〜 一人で抱え込まないでください 〜
わが子からの暴力。誰にも相談できない、恥ずかしい、自分の育て方が悪かったのか——そう思い詰めていませんか。家庭内暴力は珍しいことではありません。そして、あなたのせいではありません。このページでは、思春期の子どもからの暴力にどう向き合うかを、一緒に考えます。
叩く、蹴る、物を投げる
「殺す」「死ね」「出ていけ」、人格否定
壁に穴を開ける、家具を壊す、ドアを蹴破る
「金出さないと暴れる」
弟や妹に暴力をふるう、脅す
家族の行動を制限する、家族を従わせる
「暴れるのは家の中だけ」というパターンがとても多いです。外では普通に見える → 周囲に話しても信じてもらえない → 孤立する——この悪循環が、問題をさらに深刻にしています。
「あなたの育て方が悪い」で片付けてはいけません。原因は複合的です。
前頭前皮質(衝動をコントロールする部位)は25歳頃まで発達途上です。思春期は感情のアクセルが強く、ブレーキが弱い時期。これは本人の「やる気」の問題ではなく、脳の構造的な特徴です。
ADHD(衝動性)、ASD(感覚過敏・こだわり)、うつ(イライラ)、統合失調症の前駆症状、双極性障害の躁状態——これらが背景にある場合、適切な治療で暴力が大幅に減ることがあります。
いじめ、不登校、友人関係、受験のプレッシャー。外で我慢している分、家で爆発する。家が「安全な場所」だからこそ暴力が出るという皮肉な構図です。
夫婦間の不和を見て育った、親からの過干渉・過保護、虐待の連鎖。家庭の中で学んだコミュニケーションパターンが暴力として表れることがあります。
昼夜逆転 → 自律神経の乱れ → 易怒性の増加。ゲームを止められると暴れる。依存そのものが暴力の引き金になっているケースが増えています。
市販薬の乱用(咳止め等)、エナジードリンクの過剰摂取。本人が隠していることが多く、親が気づきにくい問題です。
原因は一つではなく、複数が絡み合っていることがほとんどです。原因を探ることは「犯人探し」ではなく、適切な治療につなげるために必要なステップです。
距離を取る、別の部屋に移動する、家を出る。「逃げる」ことは負けではありません。あなたが安全でいることが、家族全体を守ることにつながります。
叩き返す、力で押さえつけるのは逆効果です。暴力がエスカレートし、お互いがケガをします。「力で制する」は一時しのぎにしかなりません。
「叩くのはダメ」「今は離れるね」。長い説教は暴力の最中には届きません。短く、落ち着いた声で。
嵐が過ぎたあと、「さっきは怖かったよ」「何がつらかったの?」と声をかけてみてください。暴力の「直後」ではなく、お互いが落ち着いてからが大事です。
わが子でも、命の危険があれば迷わず通報していいのです。通報は「裏切り」ではなく「保護」です。あなたの安全も、子どもの将来も、守るための行動です。
イライラしたら部屋に行く、枕を殴る、散歩に出るなど。穏やかなときに本人と話し合って決めるのがポイントです。暴力の最中に新しいルールを提案しても届きません。
「今日はイライラしても暴れなかったね」——小さな変化を言葉にして伝えてください。「暴力しなかったこと」は、本人にとって大きな努力かもしれません。
「暴力が出たら親は家を出る」「警察を呼ぶ」——脅しではなく、事前に合意したルールとして文字にしておきましょう。紙に書いて貼っておくのも有効です。
学校、友人、ゲーム、睡眠。何がストレスになっているかを本人と一緒に整理してみましょう。「原因を取り除く」よりも、「今つらいんだね」と受け止めることが先です。
あなたが疲弊しているとき、限界は低くなります。自分のために休む時間を意識的に作ってください。あなたが倒れたら、家族全体が困ります。自分を大事にすることは、わがままではありません。
当院では、暴力をふるっている本人(自傷他害のある方)の直接の治療は行っておりません。本人の治療が必要な場合は、児童精神科や入院設備のある医療機関をご紹介します。
当院がお力になれるのは、暴力の被害を受けて苦しんでいる親御さん・ご家族の相談とケアです。
暴力を受けている方は、恐怖・罪悪感・孤立感で心身ともに消耗しています。まずあなた自身の気持ちを安全に話せる場所として、診察をご利用ください。暴力への対応のコツ、巻き込まれないための技術も一緒に考えます。
暴力を受け続けることで、不安障害・抑うつ・不眠・PTSDを発症する方は少なくありません。必要に応じてお薬の処方や、休養のための診断書を作成します。親が倒れたら家庭は回りません。
「どうすればいいかわからない」状態を、一緒に整理します。本人をどの医療機関につなぐか、児童相談所に相談すべきか、きょうだいの安全をどう守るか——具体的な次のステップを一緒に考えます。
夫婦間で対応がバラバラだと状況は悪化します。対応方針の統一、きょうだいへの影響の確認、それぞれの家族の役割の見直しを助言します。
本人の治療が必要な場合、児童精神科や入院設備のある医療機関の情報をお伝えします。どこに相談すればいいかわからない状態を、一緒に整理します。