全般不安症(全般性不安障害)のはなし
ひとつの心配が片づいたと思ったら、すぐ次の心配がやってくる。
仕事のこと、家族のこと、体のこと、お金のこと。頭の中で「もしも……」がずっと鳴っていて、気が休まる時間がない。
そんな状態が長く続いているなら、それは「心配性な性格」だけでは説明しきれないかもしれません。ここでは、心配が止まらなくなるしくみと、少しずつ楽になっていく方法をお伝えします。
まず、いまの状態を数字で見てみたい方は、7つの質問に答える不安のセルフチェックをどうぞ。読みすすめる前でも、あとからでも大丈夫です。
📝 不安のセルフチェック(GAD-7)へ※ これは診断のためのチェックではありません。いくつ当てはまるかより、「自分のことかも」と感じたかどうかを大事にしてください。
心配すること自体は、だれにでもある自然なはたらきです。先のことに備えられるのは、心配のおかげでもあります。ちがいは、心配の量・続く期間・止めにくさにあります。
| よくある心配 | 全般不安症の心配 | |
|---|---|---|
| 量 | 気になることがあるときに、ときどき | 一日の多くの時間を心配が占めている |
| 期間 | 出来事が過ぎれば落ち着く | テーマを変えながら、半年近く続いている |
| 止めやすさ | ほかのことをすれば切り替えられる | 止めたくても、自分では切り替えにくい |
| からだ | あまり影響しない | 肩こり・疲れ・眠れない・集中しにくいなどが続く |
| 生活 | ふだんどおり過ごせる | 仕事や家事、人づきあいに負担が出ている |
全般不安症は、心配のブレーキが効きにくくなっている状態です。「もともと心配性だから仕方ない」とあきらめなくて大丈夫です。心配との付き合い方は、練習や治療で変えていくことができます。
日本の調査では、一生のうちに全般不安症を経験する人はおよそ2〜3%とされています。女性にやや多く、20代から中年期まで、さまざまな年代で始まります。
「性格の問題」と思われやすいため、何年も相談せずに過ごしている方が少なくありません。また、肩こりや胃の不調、不眠などの体の症状から、先に内科や整形外科を受診していることも多いです。
不安は、体に危険を知らせる「火災報知器」のようなものです。全般不安症では、この報知器の感度が上がりすぎて、トーストを焼いた煙くらいでも鳴ってしまう状態になっています。鳴っているのは報知器が壊れているからではなく、あなたを守ろうと一生懸命にはたらきすぎているからです。
そして、心配が長引くときには、たいてい次のようなループができています。
このループを支えているのは、多くの場合2つの思い込みです。
「心配は役に立つ」——心配しておけば、いざというときに困らない、悪いことを防げる。
「心配は止められない」——一度始まったら、自分ではどうにもできない。
前者があるから心配を手放せず、後者があるから心配がこわくなる。治療では、心配の中身よりも、この2つの思い込みと心配との付き合い方に取り組むと、効果が出やすいことがわかっています。
全般不安症の方は、「わからない」「はっきりしない」状態がとても苦手になっていることが多いです。先のことは、だれにとっても100%はわかりません。それでも確実な安心を得ようとして、考え続けたり確かめ続けたりしてしまいます。
雨の予報を何度確かめても、雨の降る確率は変わりません。確かめるたびに少し安心できても、その安心は長続きせず、また確かめたくなります。
心配が続くと、体はずっと「警戒モード」のままになります。その結果、次のようなサインが出やすくなります。
甲状腺の病気や不整脈など、体の病気でも似た症状が出ることがあります。診察では、必要に応じて血液検査などで体の状態も確かめていきます。
気分の落ち込み(うつ病)——心配が長く続くと、疲れ果てて気分が沈んでくることがあります。全般不安症とうつ病は、重なることがとても多い組み合わせです。
→ うつ病について
眠りの問題——布団に入ると心配が始まり、眠れないことでさらに不安になる、という悪循環が起こりやすくなります。
→ 不眠の認知行動療法
ほかの不安——パニック発作や、人前での強い緊張(社交不安)がいっしょにある方もいます。
→ 不安のメカニズムと対処法
お酒・カフェイン——お酒で一時的に楽になっても、酔いがさめるころに不安がかえって強まります。コーヒーやエナジードリンクのカフェインも、そわそわや動悸を強めることがあります。量を少し見直すだけで、楽になる方もいます。
→ カフェインチェック
全般不安症は、治療で良くなることが十分に期待できる状態です。ひとりひとりの希望や生活に合わせて、次のような方法を組み合わせていきます。
効果の裏づけがもっとも多いのは認知行動療法(CBT)です。終わったあとも効果が続きやすいことがわかっています。とくに、
などに効果が示されています。このアプリのワークも、これらの考え方をもとにしています。
抗うつ薬の一部(SSRI・SNRIと呼ばれるお薬)が、心配や不安をやわらげるのに効果があります。2026年からは、日本でも全般不安症に正式に使えるお薬が出ました。
くわしくは お薬の情報 をご覧ください。
いわゆる安定剤(抗不安薬)は、すぐに効いて頼りになるお薬です。一方で、長く続けると体が慣れてやめにくくなることがあります。そのため、つらい時期を乗り切るための短い期間の補助として、計画的に使うのがおすすめです。
すでに長く飲んでいる方も、急にやめるのは避けて、主治医と相談しながら進めていきましょう。→ 安定剤の減らし方
目標は「心配をゼロにすること」ではありません。ラジオを消すことはできなくても、音量を下げてBGMにすることはできます。そのための3つの練習を、ワークで用意しています。
「いま、自分にできることがある心配」と「もしもの心配」に分けます。できることがあれば小さな一歩を決め、もしもの心配はいったん置いておきます。
1日1回「心配タイム」を決めて、それ以外の時間に浮かんだ心配はメモして先送りします。「心配は止められない」が本当かどうかを確かめる実験です。
何度も見直す・調べる・確かめる行動を、少しだけ減らしてみます。「わからない」ままでも、思ったより大丈夫だったという経験を積み重ねます。
気持ちの持ち方だけで切り替えられるなら、きっともうとっくにそうしているはずです。全般不安症は、体と心の警戒システムが過敏になっている状態で、「気にしないようにしよう」と頑張るほど、かえって心配が強まることもあります。意志の強さの問題ではありません。
とても大切な疑問です。実際には、心配し続けることで備えられている量は、思っているより少ないことが多いです。本当に必要な備えは、「仕分け」で見つけた小さな一歩として行動に移せば十分です。ワークでは、心配を減らした日と、いつもどおり心配した日で、結果に差があったかどうかを確かめることもできます。
心配がどれだけ続いても、それによって心や頭が壊れてしまうことはありません。そのこわさ自体が「心配についての心配」で、ループを強めている部分です。つらさが強いときは、ひとりで抱えずに診察でお話しください。
全般不安症の治療の中心になる抗うつ薬(SSRI・SNRI)には、いわゆる依存性はありません。ただし、急にやめると一時的に体調をくずすことがあるので、やめるときは少しずつ減らします。安定剤(抗不安薬)は依存が起こりうるので、短い期間・計画的に使います。
長く続いていると、心配が性格の一部のように感じられます。でも、心配との付き合い方は練習で変えていくことができますし、治療で楽になる方はたくさんいます。「心配性なところ」がなくなるのではなく、それに振り回される時間が短くなっていくイメージです。
重なる部分もあります。全般不安症の心配は、ふだんの生活のいろいろなことに広がるのが特徴です。一方、「手が汚れた気がして何度も洗う」「鍵を何十回も確かめる」など、特定の考えと行動がくり返されて、1日に1時間以上かかるような場合は強迫症のこともあります。→ 強迫症について
診察では、どんなことを・どのくらい心配しているか、体の症状、眠り、お酒やカフェインの量などを教えていただけると、話が早く進みます。ワークの記録をそのまま見せていただいても大丈夫です。