診察で、実際に何をするのか
ずっと生きづらさがあって、あるとき発達障害という言葉を知って、これかもしれないと思った。
そう思って受診を考えている方に、診察で実際に何が起きるのかを、先にお伝えしておきます。
大げさにも、過小にもしないつもりです。「調べてほしい」と言いに来ていただいて構いません。ただ、来る前に知っておくと楽になることが、いくつかあります。
発達障害の診断は、特性の数で決まるものではありません。次の3つが全部そろって、はじめて診断という言葉を使います。
特性は連続的につながっていて、どこかに自然な切れ目があるわけではありません。それでも診断という区切りを置くのは、お薬や配慮や福祉の制度を使うために、線が必要だからです。つまり診断は、あなたがどんな人かを言い当てる名前ではなく、道具を使うための手続きに近いものです。
ネットで見かける項目は、言葉が短いぶん、どうしても広く読めてしまいます。ここでは「よくある読み方」と「診察で実際に見ているところ」を並べます。当てはまる数を数える必要はありません。数えても答えは出ないからです。
項目そのものより、どれくらいの頻度で/どんな場面で/いつからのほうが情報量があります。「ある・ない」ではなく、この3つで自分のことを説明できるようにしておくと、診察が一気に進みます。整理シートはそのために作りました。
発達特性の見立ては、血液検査のように「その日に数値が出る」ものではありません。いくつかの情報を集めて、重ね合わせて判断します。
これは方によってかなり違います。情報がそろっていて像がはっきりしている方もいれば、まずうつや睡眠の問題を整えてから、あらためて見直したほうがよい方もいます。後者の場合、数か月かけることもあります。
急いで結論を出すことが目的ではありません。間違った名前がつくことのほうが、あとで困ります。具体的な見通しは、初診のときに一緒に立てましょう。
ここは誤解がとても多いところです。知能検査(WAIS、WISCなど)は、「発達障害かどうか」を判定する検査ではありません。
これらの検査でわかるのは、得意なことと苦手なことの凸凹の形です。言葉で理解する力、目で見て捉える力、短く覚えておく力、作業の速さ——こういったものを測って、その人の中での差を見ます。
どの場面でつまずきやすいか。どんな伝え方なら入りやすいか。職場や学校に配慮をお願いするときの、根拠のある説明材料。「あなたはこうすると楽になる」という手がかりが得られます。
発達障害かどうか、そのものです。凸凹が大きい人にも診断がつかないことがあり、凸凹が小さい人に診断がつくこともあります。診断は、検査の結果だけでなく、困りごとの内容と、子どもの頃からの経過を合わせて判断します。
大人の方の場合、WAIS-IV(全下位検査)+結果説明30分という形で行っています。所要時間は約2時間30分(検査2時間+説明30分)です。結果はその場ではなく、後日あらためて時間をとってご説明します。
全項目をていねいに実施し、後日あらためて時間をとってご説明する形をとっています。保険の範囲では、これだけの時間と詳しい報告をお出しすることが難しいため、当院では自費でお受けしています(33,000円・2026年9月現在)。
全員に行うものではありませんし、受けなくても診察は進みます。必要かどうかは、お話を伺ったうえで一緒に決めましょう。
お子さんの場合はWISC-Vを使い、保護者面接と報告書がつきます。最新の料金やメニューは、当院ホームページの「自費メニュー」でご確認ください。
💴 自費メニュー(当院ホームページ) 知能検査などの料金・所要時間の最新情報はこちらこのアプリには、気分や不安、お酒の量などをはかるチェックがいくつかあります。でも発達特性のチェックは、あえて置いていません。
理由は2つあります。ひとつは、短い項目に「はい・いいえ」で答える形では、さきほどの3つ目の要件(子どもの頃から続いているか)が確かめられないこと。もうひとつは、点数が出ると、それが答えのように感じられてしまうことです。
医療機関で使う質問紙もありますが、あれは診察の中で、ほかの情報と一緒に読むための道具です。単独では診断になりません。
当院では、大人のADHDの症状を評価する補助として CAARS という質問紙を使うことがあります。紙に記入していただく形式で、15分ほど。こちらも当院では自費でお受けしています(3,300円・2026年9月現在)。
ただし、これも単独では診断になりません。点数が高くても診断がつかないことがありますし、低くても診断がつくことがあります。伺ったお話や、子どもの頃からの経過と合わせて読んで、はじめて意味を持ちます。
受けるかどうかは、必要に応じて診察でご相談します。ご自分から申し出ていただいても構いません。
やってみたこと自体は、まったく問題ありません。結果よりも、「なぜやってみようと思ったのか」のほうが大事な情報です。そのきっかけになった出来事を、診察で教えてください。そこから始めるのがいちばん早いです。
初回の短い問診だけで診断名がつく、その日のうちにお薬が出る、高額な講座や資格をすすめられる——こういう場面に出会ったら、一度立ち止まってください。子どもの頃の情報を確かめずに発達障害の診断をつけることは、本来できません。
生きづらさの正体は、発達特性だけではありません。診察では、これらを並行して確かめています。どれも「気のせい」ではなく、手当ての方法がはっきりしているものばかりです。
それでも困りごとは残ります。そのときのための専用のページを用意しています。診断がつかなかったことの意味と、そこから何ができるかをまとめてあります。
🌗 診断がつかなかったあなたへ(ADHDグレーゾーン) 診断の線はどこに引かれるのか、診断がなくても使える工夫診断がつくかどうかわからないまま来ていただいて、まったく構いません。むしろ、それがふつうです。
「発達障害かどうか調べたい」と受付で言っていただければ、それで伝わります。うまく説明できなくても大丈夫ですし、このページや整理シートを開いて見せていただくだけでも、話が早く進みます。
そして、これは何度でもお伝えしたいことですが——診断がつかなくても、困っていることには手当てができます。名前がつくかどうかと、楽になれるかどうかは、別の話です。