忘れようとするほど、戻ってくるのはなぜでしょう
ふとした瞬間に、昔の失敗や、言われたひとこと、つらかった出来事がよみがえる。
「もう終わったことなのに」「考えても仕方ないのに」とわかっていても、頭が勝手に再生してしまう。
それは、あなたの心が弱いからでも、切り替えが下手だからでもありません。記憶がそういうふうにできているからです。ここでは、そのしくみと、あなたに合った出口を一緒に探していきます。
強い感情をともなった出来事は、脳の中で「重要な情報」として特別なしるしをつけて保存されます。生き延びるために、危険や痛みを忘れないようにできているのです。
そして、その記憶はきちんと片づけられるまで、何度も棚から落ちてきます。似た場所、似たにおい、似た口調——ほんの小さな手がかりで再生が始まります。自分で「思い出そう」と決めたわけではないのに始まるのは、このためです。
「シロクマのことを考えないでください」と言われると、かえってシロクマが浮かんでくる——これは実験で繰り返し確かめられている現象です。考えまいとするためには、心のどこかで「それ」を監視し続ける必要があり、その見張り役が逆に思い出させてしまいます。
つまり、うまくいかなかったのはやり方の相性であって、あなたの努力不足ではありません。方向を変えると、ぐっと楽になることがあります。
ひとくちに「いやなことを思い出す」といっても、中身はずいぶん違います。タイプによって、効く方法が変わります。どれが一番近いか、読みながら探してみてください。いくつか重なっていても大丈夫です。
自分から考えはじめて、止まらなくなるタイプです。「なんであんなことを言ってしまったんだろう」「どうすればよかったんだろう」と、答えの出ない問いを何周もします。考えている本人は「反省している」「整理している」つもりでいることが多いのが特徴です。
ぐるぐるは、落ち込みや不安を長引かせることがわかっています。止めようとするより、「答えの出る問い」と「出ない問い」を仕分けするほうがうまくいきます。
🌀 ぐるぐるを止めるワークへ 仕分け・棚上げ・切り替えの3つを練習します「全部自分のせいな気がする」が強いときは 自責について、考え方のクセを整理したいときは 考え方のクセに気づくワーク もどうぞ。
自分の意思とは関係なく、突然、生々しくよみがえるタイプです。映像や音、においをともなうこともあり、「思い出している」というより「今また起きている」ような感覚になることもあります。心臓がどきどきしたり、体がこわばったりと、体の反応がついてくるのも特徴です。
このタイプは、記憶の中身を掘り下げるより、まず「今ここ」に戻ることが先です。安全を確かめてから、少しずつ距離をつくっていきます。
🍃 嫌な記憶を手放すワークへ 記憶を消すのではなく、記憶との距離を変える練習ですいま動悸や息苦しさが強いときは おちつくアプリ で先に体を落ち着けてください。つらい出来事のあとの反応について知りたいときは PTSD・トラウマ、トラウマ・ファーストエイド もあります。
何年も前の失言や、気まずかった場面が急によみがえって、思わず「うわー」と声が出たり、頭を振ったりしてしまうタイプです。
これはとてもありふれた現象で、病気のサインではありません。多くの人が経験していますし、たいていは数十秒で過ぎていきます。困るのは、そのあとに「自分はダメだ」という評価をくっつけてしまうときです。評価をくっつけないでいられると、ただの記憶として通り過ぎていきます。
「お、来たな」とだけ心の中でつぶやいて、いま手を動かしていることに戻ってみてください。追い払おうとせず、かといって付き合いすぎもせず。通り過ぎるのを待つのがいちばん早い方法です。
そのあと自分を責めてしまうときは 自己肯定感は上げなくていい が役に立つかもしれません。
日中は平気なのに、布団に入ったとたんに始まるタイプです。部屋が暗く静かになり、ほかにすることがなくなると、頭のスペースが空いて考えごとが入り込んできます。眠れないとさらに考える時間が増える、という悪循環にもなりやすいところです。
夜型には、夜に頑張って考えを止めようとするより、日のあるうちに「考える時間」をあらかじめ取っておくやり方が向いています。夜の自分に丸投げしないための準備です。
🌙 心配事の棚上げワークへ 夕方の15分に書き出して、夜の頭を空けておきますどれも、多くの方が自然にやっていることです。悪いことではありません。ただ、もう少し楽になる別のやり方がある、というお話です。
どれも、よくあるご相談です。「これくらいで受診していいのかな」と迷ったときこそ、診察の時間を使ってください。何をどう話せばいいか決まっていなくても大丈夫です。このページを開いて見せていただくだけでも、話が早く進みます。