👨‍👩‍👧

ご家族へ

〜 家から出なくなった人と、どう関わるか 〜

まず、ご家族へ

💡 育て方のせいではありません

家族が家から出なくなったとき、多くのご家族が「自分の育て方が悪かったのでは」と考えます。そして、そう言ってくる親族や知人も、残念ながらいます。

はっきりお伝えします。ひきこもりは、育て方だけで起きるものではありません。本人の特性、学校や職場での出来事、体調、時代の状況——いくつもの要素が重なって起こります。

そして、原因探しは回復の役に立ちません。「なぜこうなったか」より「これからどうするか」のほうが、ずっと実りがあります。

💡 このページで、いちばんお伝えしたいこと

本人を動かそうとするより、関わり方を変えるほうが、結果的に早く動きます。

実際、ご家族が先に相談窓口へ行き、接し方が変わったことで本人が動きはじめた——これがいちばん多いパターンです。

本人を説得して連れてくる必要はありません。ご家族だけで相談できる公的な窓口があります。くわしくは Section 05 にまとめました。

🌿 いま、ご家族が疲れていませんか

この状況は、何年も続くことがあります。ご家族が倒れてしまっては、支えるものがなくなります。

このページの最後に、ご家族自身のためのことを書きました。本人のことより先に、そちらを読んでいただいてもかまいません。

やってしまいがちな、3つのこと

どれも本人を思ってのことです。悪気があってするわけではありません。ただ、結果として状況を固めてしまうことがわかっています。

① 詰問する・問い詰める

「これからどうするつもりなの」「いつまでこうしているの」「少しは考えているの?」

心配からの言葉ですが、本人には答えのない問いとして届きます。答えられないので、黙る・部屋に戻る・会話を避ける——という反応になります。

そして次からは、顔を合わせること自体が「問い詰められる時間」になり、接点そのものが減っていきます。

⚖️ ② 他人と比べる・世間の話をする

「〇〇さんちの子は就職したって」「近所の目もあるから」「お父さんが恥ずかしい思いをする」

本人がいちばん気にしているのが、まさにそこです。すでに十分に恥じています。そこを刺激されると、外に出る=人に見られる=恥をかくという結びつきがさらに強くなります。

結果として、外出のハードルが上がります。意図とは逆の効果です。

🔌 ③ 生活を止めて動かそうとする

お金を渡さない。食事を出さない。ネットを切る。部屋のドアを外す。無理やり連れ出す。

「このままではいけない」という思いからの行動ですが、効果がないばかりか、危険を伴います。本人が強く反発して暴力的になる、逆に完全に部屋から出てこなくなる、最悪の場合は自傷につながることがあります。

特に「無理やり連れ出す」業者には、深刻なトラブルが報告されています。費用を払っても状況が悪化することがあります。公的な相談窓口を先にお使いください。

かわりに、効きやすい3つのこと

① 接点を、細く切らさない

会話が続かなくてかまいません。「今日は寒いね」「ごはん置いておくね」——返事がなくても、声をかけ続けます。

ポイントは、返事を求めない形にすることです。質問にすると答える義務が生まれ、答えられないので避けられます。報告・独り言の形にすると、負担なく届きます。

ドア越しでも、メモでも、LINEでも大丈夫です。「関心を向け続けている」ことが伝わればいいのです。

② 将来の話ではなく、今日の話をする

「これからどうするの」は、本人がいちばん答えられない質問です。かわりに、今日・明日の具体的な話をします。

「お茶いる?」「この番組おもしろかったよ」「ちょっと手を貸してくれる?」

「手を貸して」は特に効きます。頼られることは、本人にとって「まだ役に立てる」という感覚につながるからです。荷物を持つ、電球を替える、パソコンを見てもらう——小さいほどいいのです。

③ 変化を、大げさに喜ばない

本人が少し外に出た。人と話した。——うれしいのは当然ですが、ここで大きく反応すると逆効果になることがあります。

「よかった!これで安心ね」「その調子で明日も」と言われると、本人は「期待に応え続けなければ」と感じ、プレッシャーで次が出にくくなります。

「そうなんだ」くらいで、いつもどおりにしておく。これが、続けやすい環境になります。

💬 言い方の、具体例

◎ 届きやすい言い方
  • 「ごはん、ここに置いておくね」
  • 「今日は暑かったね」
  • 「ちょっと手を貸してもらえる?」
  • 「話したくなったら、いつでも」
  • 「心配してる。でも、急がなくていい」
  • 「私は相談に行ってみようと思う」
△ 避けたい言い方
  • 「いつまでこうしているの」
  • 「これからどうするつもり?」
  • 「〇〇さんちの子は……」
  • 「私たちが死んだらどうするの」
  • 「甘えてるだけでしょう」
  • 「あなたのために言ってるのに」

右側が出てしまうのは、ご家族が追い詰められているサインでもあります。責任を感じるほど、言葉は強くなります。ご自身を責めないでください。

年代別 — ご家族が気をつけたいこと

関わり方の基本は同じですが、年代ごとに事情と使える制度が違います。該当するところをご覧ください。

🎒 10代のお子さん

いちばん大事なのは、学校とのつながりを細く保つことです。完全に切れてしまうと、戻る道がなくなります。担任・スクールカウンセラー・教育支援センターと、親ごさんが連絡を取り続けてください。本人が会わなくてもかまいません。

「行きなさい」と毎朝言うのは、たいてい逆効果です。かわりに「今日は休むのね」と決めてしまい、その日の予定を立てるほうがうまくいきます。宙ぶらりんの時間がいちばんつらいからです。

体の病気が隠れていることもあります。朝起きられない、立つと気分が悪い、といった場合は起立性調節障害の可能性があります。一度は小児科や内科で診てもらってください。

この年代で使えるもの
  • スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー
  • 教育支援センター(適応指導教室)・フリースクール
  • 別室登校・保健室登校という選択肢
  • 児童相談所、市区町村の子ども家庭支援窓口
🎓 20代のお子さん

この年代は、親が先回りしすぎると本人の動きを止めてしまいます。手続きを全部やってあげる、求人を探して渡す、代わりに電話をかける——よかれと思ってのことですが、「自分は何もできない」という感覚を強めます。

かわりに、「情報だけ置いておく」のがおすすめです。窓口のパンフレットを机に置く、URLを送るだけ送る。感想を求めない。読むかどうかは本人に任せます。

また、この年代は制度が最も充実しています。まだ若いうちに相談につながると、選べる道が多く残ります。

この年代で使えるもの
  • 地域若者サポートステーション(サポステ・15〜49歳、無料)
  • ひきこもり地域支援センター
  • 就労移行支援事業所(診断がある場合)
  • 大学の学生相談室(在籍中・休学中も使えます)
💼 30〜50代のご家族(配偶者・きょうだい・親)

休職や退職がきっかけの場合、最初の1ヶ月は「しっかり休ませる」のが正解です。ここで焦らせると回復が遅れます。

ただし、2ヶ月目以降は少しずつ生活を動かす時期に変わります。この切り替えを、ご家族だけで判断しないでください。主治医と相談しながら進めるのが安全です。

配偶者の方の場合、「働いていないこと」に触れるかどうかで悩まれます。目安としては、収入や手続きの実務的な話はしてよい、ただし人格や努力の話にはしない——ここを分けると伝わりやすくなります。

この年代で使えるもの
  • 傷病手当金・自立支援医療・障害年金などの制度
  • リワークプログラム(復職支援)
  • 会社の産業医・保健師との面談
  • ひきこもり地域支援センター(年齢制限はありません)
🍵 高齢のご家族/高齢の親と中年の子(8050問題)

高齢のご本人の場合、外出が減ることは体力・認知機能・気分のすべてに影響します。「年だから」で片づけず、週に1回でも約束のある予定を一緒に作ってください。地域包括支援センターは、介護認定がなくても相談できます。

そして、高齢の親ごさんが中年のお子さんを支えている場合。いわゆる8050問題です。ここでいちばん大事なのは、親ごさんが元気なうちに、外部とつながっておくことです。

「自分たちがいなくなったらどうなるか」という不安を抱えたまま、誰にも相談できずにいるご家庭が本当に多くあります。親の代で相談の入り口を作っておくことが、いちばんの備えになります。

この時期にしておきたいこと
  • 地域包括支援センター・市区町村の福祉窓口に一度つながっておく
  • 生活の実務(お金・手続き・住まい)を、少しずつ本人と共有する
  • 親ごさん自身の健康と介護の準備も並行して進める
  • 家族会(KHJなど)で、同じ立場の方の話を聞く

相談先 — ご家族だけで行けます

いちばん多い誤解が「本人を連れて行かないと相談できない」というものです。公的な窓口なら、ご家族だけで相談できます。

ここで大事な注意点です。病院やクリニックは、ご本人が受診されないと診療ができません。ご家族だけでお越しいただいても、診察も治療もできません。健康保険が、ご本人を診察して初めて使えるしくみだからです。ご家族だけのご相談を受けているのは、下記の公的な窓口です。

🏛️

公的な窓口(無料)

お住まいの自治体名と一緒に検索すると出てきます。

  • ひきこもり地域支援センター(都道府県・指定都市)
  • 精神保健福祉センター
  • 地域若者サポートステーション(15〜49歳)
  • 市区町村の福祉・生活困窮の相談窓口
  • 地域包括支援センター(高齢の方)
  • 保健所
🤝

同じ立場の人に会う

専門家より、同じ経験をした家族の話のほうが届くことがあります。

  • 家族会(KHJ全国ひきこもり家族会連合会など)
  • 自治体が開く家族向け教室・講座
  • オンラインの家族の集まり
  • 保健所・自治体が紹介してくれる親の会

⚠️ 「引き出し業者」にはご注意ください

高額な費用で本人を連れ出し、施設に入れる——という民間業者があります。訴訟になった事例や、本人が深く傷ついた事例が報告されています。

追い詰められているときほど「すぐ解決する」という言葉に引かれますが、まず公的な窓口にご相談ください。無料で、継続して関わってくれます。

💡 相談に行くとき、こう言えば大丈夫です

何を話せばいいかわからない、というご相談をよくいただきます。次のひとことだけで十分です。

「息子(娘)が何年も家から出ていません。本人は来られませんが、相談できますか」
「どう関わればいいのか、わからなくなってしまって」
「本人ではなく、私自身が限界です」

整理してから行く必要はありません。整理を手伝うのが、窓口の仕事です。

ご家族自身のことも

ここは、本人のためではなくあなたのためのセクションです。

💡 支える人が、いちばん疲れます

この状況は、何年も続くことがあります。そして周囲には話しにくい。家庭の中だけで抱えて、少しずつすり減っていくご家族を、たくさん見てきました。

実際、ご家族の側にうつや不眠が出ることは珍しくありません。これは弱さではなく、長期間の負荷に対する自然な反応です。

① ご自身の生活を、止めない

「自分だけ楽しむのは申し訳ない」と、旅行も外食も友人との約束もやめてしまう方が多くいます。

でも、ご家族が家に閉じこもると、家庭全体が閉じます。本人にとっても、家の外の空気が入ってこなくなるのはよくありません。

出かけてください。楽しんでください。それは裏切りではなく、この状況を長く支えるために必要なことです。

② ひとりで抱えない

配偶者、きょうだい、親戚。家庭の中で情報を共有している人が1人でもいるかで、負担はまったく違います。

そして、家の外にも1つ。公的な窓口でも、家族会でも、信頼できる友人でもかまいません。「知っている人がいる」という状態を作ってください。

③ 期限を決めない

「今年中には」「せめて30歳までには」——期限を置くと、そこに近づくにつれてご家族が焦り、言葉が強くなります。そして本人はそれを敏感に感じ取ります。

かわりに、「いま、どう暮らすか」に目標を置きます。長期戦を前提にしたほうが、結果として早く動くことが多いのです。

💚 これだけは、覚えておいてください

あなたが元気でいることが、いちばんの支援です。
本人が動き出すとき、そばに元気な人がいるかどうかで、その後がまったく違います。

よくあるご質問

Q. お金を渡し続けていいのでしょうか。
A. 生活に必要な分は、渡してかまいません。お金を止めて動かそうとするのは、効果がないうえに関係が壊れます。
ただし、金額と使いみちを、あいまいにしないほうがよいのは確かです。「毎月いくら」と決めて、そのことは淡々と話す。人格の話にせず、実務の話として扱うのがコツです。
将来のお金の不安は、ご家族だけで抱えず、福祉の窓口で一度相談してください。使える制度があることが少なくありません。
Q. 何年も声をかけていますが、返事がありません。
A. 届いていないわけではありません。返事ができないだけ、ということがほとんどです。
返事を求めない形(報告・独り言)に変えてみてください。そして、反応がなくても続けることに意味があります。何年もたってから「あのとき声をかけてもらっていたことは、わかっていた」と話す方は本当に多いのです。
Q. 暴力や物を壊す行為があります。
A. これは別の対応が必要です。まず、ご家族の安全を確保してください。
我慢して同じ家にいるという選択は、双方にとって危険です。身の危険を感じたら、ためらわず離れる・110番することをためらわないでください。通報は本人を見捨てることではなく、事態を止めるための手段です。
そのうえで、精神保健福祉センターや保健所に必ず相談してください。背景に治療が必要な状態があることもあります。
Q. 受診させたいのですが、本人が嫌がります。
A. 無理に連れてくる必要はありません。ただ、順番についてはっきりお伝えしておきます。ご家族だけで医療機関にお越しいただいても、できることがありません。ご本人を診察していない以上、診断も治療もできないからです。ご家族の相談に応じている医療機関もありますが、その場合は自費になります。
そこで順番としては、まず公的な窓口(ひきこもり地域支援センター・精神保健福祉センター・保健所)にご家族だけで相談してください。そこでは、関わり方の助言に加えて、本人のところへ訪問してもらえる場合もあります。受診につなぐ道すじも一緒に考えてもらえます。
本人を誘うときのコツもあります。体の症状(眠れない・頭痛・だるさ)を入り口にすると応じてもらいやすく、「精神科」という言葉に抵抗がある場合は「眠れないのを診てもらおう」という誘い方のほうが通ることが多いです。
Q. きょうだいにどう説明すればいいですか。
A. 隠さないほうが、結果的にうまくいきます。きょうだいは、説明されなくても状況を察していることがほとんどです。
気をつけたいのは、きょうだいに支える役割を背負わせすぎないことです。「あなたがしっかりしなさい」「将来は面倒を見てあげて」という言葉は、そのきょうだいの人生に重くのしかかります。
将来のことは、きょうだいにではなく、公的な窓口と一緒に考えてください。

関連するページ

← ご本人向けのページ こころの学び →
📚 参考資料