見えるもの、調子の波、からだの動き。
特徴を知ることが、いちばんの支えになります
「レビー小体型認知症です」と告げられて、どんな病気なのか、これから何に気をつければよいのか、不安な気持ちでこのページを開いた方も多いと思います。
このページは、ご家族とご本人に向けて、この病気の特徴と、今日からできることをまとめたものです。全部を一度に読まなくても大丈夫です。気になるところから、少しずつ読んでみてください。
いくつか、先にお伝えしておきたいことがあります。
レビー小体型認知症の方は、抗精神病薬というお薬で、少量でも重い副作用が出ることがあります。
ほかの病院にかかるとき・入院するとき・救急のときは、「レビー小体型認知症です」と必ず伝えてください。
αシヌクレインというたんぱく質がかたまりになったもの(レビー小体)が、脳の広い範囲にたまっていく病気です。
レビー小体は、パーキンソン病でも見られるもので、レビー小体型認知症はパーキンソン病と同じ仲間の病気と考えられています。そのため、もの忘れなどの認知機能の症状だけでなく、からだの動きや自律神経(立ちくらみや便秘など)にも症状が出やすいのが特徴です。
日本の調査では、認知症のうちレビー小体型(認知症を伴うパーキンソン病を含む)は数%と報告されています(朝田, 2013)。ただし、この病気はほかの病気と間違われやすく、見逃されやすいため、実際にはもっと多いと考えられています。
高齢の方に多い病気です。
この病気には、診断の手がかりになる4つの中心的な特徴があります。すべてがそろうとは限りません。
ぼんやりしている時間と、しっかりしている時間の差が大きい。日によって、また一日の中でも変わります。
そこにいない人・子ども・小動物・虫などが、くり返し、はっきりと見えます。
夢に合わせて大声を出したり、手足を動かしたりします。認知症の症状より何年も前から出ることがあります。くわしく →
動作がゆっくりになる、体がこわばる、小刻みに歩く、手がふるえる。
初めのうちはもの忘れが目立たないこともあり、うつ病やパーキンソン病、ほかの病気と診断されていることがあります。これまでの診断が違っていたとしても、それはこの病気が見分けにくいためで、ご家族の見落としではありません。
ご家族が「あれ?」と感じやすいのは、たとえばこんな場面です。
誰もいない部屋を指さして、人や動物、虫が見えると話す。本人にはとてもはっきり見えています。
会話がかみ合う日と、ぼーっとして反応が鈍い日の差が大きい。同じ日の中でも変わります。
怖い夢を見ているように叫んだり、殴るような動きをしたりする。ベッドから落ちることも。
動作がゆっくりになった、体がこわばる、手がふるえる。
立ちくらみや、なかなか治らない便秘。自律神経の症状のことがあります。
夜は眠っているはずなのに、日中の眠気が強い。
実際にはいない人が住みついている、と思い込んで不安になる。
うつ病のように見えて、実はこの病気の始まりだった、ということもあります。
寝ている間に大声を出す・手足を動かす(レム睡眠行動障害)が、もの忘れなどより何年も前から始まっていることがあります。
まっすぐ下り坂になるのではなく、しっかりしている時間とぼんやりしている時間をくり返しながら経過します。調子のよい時間には、驚くほどしっかり話せることもあります。
認知機能の症状に加えて、動きのぎこちなさ、転びやすさ、立ちくらみなど、からだの症状への備えが大切になっていきます。
進み方の速さには、一人ひとり大きな差があります。
また、いつもの波とは違って急に悪くなったときは、病気が進んだとは限りません。脱水や感染症などの体調の変化、新しく始めたお薬の影響のこともあります。早めに主治医に相談してください。
主な4つのタイプを比べました。色のついた列が、このページのレビー小体型です。
表は横にスクロールできます →
| アルツハイマー型 | 血管性 | レビー小体型 | 前頭側頭型 | |
|---|---|---|---|---|
| 日本での割合(※1) | 約7割 | 約2割 | 数%(※2) | 約1% |
| 最初に目立つこと | もの忘れ(新しいことを覚えにくい) | 意欲の低下、考えや動作のゆっくりさ | 幻視、日による調子の波、動きのぎこちなさ | 性格や行動の変化、言葉の障害 |
| 進み方 | ゆっくり少しずつ | 脳卒中のたびに段階的に(ゆっくり進むことも) | 良い日と悪い日の波がある | ゆっくり、行動の変化が先に目立つ |
| からだの症状 | 初期は少ない | 歩きにくさ、飲み込みにくさ、手足のまひ | 手のふるえ・こわばり、転倒、立ちくらみ、便秘 | 初期は少ない |
| 始まりやすい年代 | 高齢に多い(65歳未満もある) | 脳卒中の危険因子がある方に多い | 高齢に多い | 65歳未満での発症も多い |
※1 厚生労働科学研究「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」(朝田, 2013):アルツハイマー型67.6%、血管性19.5%、レビー小体型/認知症を伴うパーキンソン病4.3%、前頭側頭型1.0%
※2 レビー小体型は見逃されやすく、実際はもっと多いと考えられています
混合型(アルツハイマー型と血管性が重なるなど)も少なくありません。
いつ頃から、どんな変化があったかを、ご本人とご家族からうかがいます。幻視、調子の波、寝ている間の大声や動きは、診察室では見えにくい症状です。ご家族が気づいたことをメモしてきていただくと、とても役に立ちます。
あわせて、認知機能検査(HDS-R、MMSE など)や、手のふるえ・こわばり・歩き方などの神経の診察を行います。
どの検査を行うかは、症状や通える医療機関によって異なります。専門の医療機関にご紹介することもあります。
認知症のような症状は、慢性硬膜下血腫(頭をぶつけたあとに、ゆっくり血がたまる)、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏などでも起こることがあります。これらは治療でよくなる可能性があるため、血液検査やCT・MRIで確認します。
今のところ、レビー小体型認知症を治すお薬はありません。治療は、困っている症状をひとつずつ和らげて、暮らしやすくすることを目指します。症状が多いぶん、お薬の調整にはていねいさが必要な病気です。
幻視や興奮があっても、一般的な抗精神病薬は重い副作用が出やすいため、使うかどうかは主治医が特に慎重に判断します(くわしくはこちら)。
お薬を飲み始めたり量を変えたりしたあとに、いつもと違う変化があれば、次の診察を待たずに主治医に相談してください。お薬の個別情報
よくある場面と、試してみてほしい対応の例です。うまくいかない日があっても大丈夫。いくつか試して、ご本人に合う方法を探していきましょう。
調子の波があるぶん、ご家族はつい先回りして何でも手伝いたくなります。けれど、調子のよいときにできることは、ご本人にしてもらうほうが、自信と生活の力を保ちやすくなります。
幻視や興奮に対して一般的に使われる抗精神病薬で、レビー小体型認知症の方は少量でも重い副作用が出ることがあります。
そのため、次のようなときは、「レビー小体型認知症です」と必ず伝えてください。
入院中は、環境の変化で混乱や興奮が起きやすく、落ち着かせるためのお薬が使われる場面があります。ご家族からも、病院のスタッフにはっきり伝えておくと安心です。
また、市販の風邪薬・かゆみ止め・睡眠改善薬にも、症状を悪化させる成分が含まれていることがあります。市販薬を買うときは、薬剤師に「レビー小体型認知症です」と伝えて相談してください。
いま飲んでいるお薬を、自己判断で急にやめるのは避けてください。気になるお薬があれば、主治医に相談しましょう。
印刷して切り取り、お薬手帳に挟んでおくと、いざというときにそのまま見せられます。
スマホの場合は、この画面を見せるか、画面を保存しておくのも一つの方法です。
パーキンソン症状、立ちくらみ、ぼーっとする時間が重なり、転びやすくなっています。ゆっくり起き上がる、手すり、段差の解消、夜間の足元灯で備えましょう。立ちくらみと自律神経
ぼーっとして反応がなくなる時間や、気を失うことがあります。はじめて起きたとき、長く続くとき、頭を打ったときは、ためらわず医療機関に相談してください。そのときも「レビー小体型認知症です」と伝えてください。
寝ている間の行動によるベッドからの落下や、同じ部屋のご家族のけがに注意します。高齢者の睡眠ケア
調子の波や、見間違い、動きのぎこちなさは、運転に大きく影響します。運転については主治医と早めに話し合いましょう。認知症と運転免許
幻視も、調子の波も、動きのぎこちなさも、
病気の症状です。ご本人のせいでも、ご家族のせいでもありません。
見えているものへの怖さに寄りそい、
調子のよい時間を大切にし、転ばない住まいを整える。
それだけでも、毎日はずいぶん変わります。
そして、ほかの病院・入院・救急のときは
「レビー小体型認知症です」と必ず伝える。
これが、ご本人を守るいちばんの方法です。